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題詠100★2021 ブログトップ

題詠100★2021 091~100 [題詠100★2021]

2021-091:看

去年(こぞ)ことし棟に入りたる看護師の下はんぶんの顔を知らざり

2021-092:装

街をゆくをのこ和装にこだはらずブーツに羽織をさらり着こなす

2021-093:ラベル

たはむれる猫のラベルにひと目ぼれいつもは飲まぬ日本酒を買ふ

2021-094:規

貧しきを子に知られじとうなだれる老い人はばむ杓子定規は

2021-095:価

「カエシテ」と呻く石碑の前に立つ我に命の価値のしかかる

   「命カエシテ」強いられた堕胎、奪われた人生。俳優が見つめ続けた隔離の記憶

2021-096:年

あらたまの年のはじめはつごもりを横須賀(スカ)に上がりし花火の余韻

2021-097:働

働けば自由になると欺かれ入りにし門(かど)の今に黙せる

2021-098:詫

おろかなる失言の果て長ながとわびともつかぬ詫び言をいふ

2021-099:昇

ますらをの背ないつぱいに昇り龍 彫り師の職の今にあること

2021-100:嬉

振り向けば裳裾のかげはまぼろしかシェーンブルンに響(な)る嬉遊曲
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題詠100★2021 081~090 [題詠100★2021]

2021-081:あさって

春あさき磯の波間をあさつては上ぐる若布の濃茶にひかる

2021-082:太

かへり来てひと息つけば心太ガラス小鉢にゆるりと沈む

2021-083:欧

北欧のテキスタイルとコラボせし会津のくまのまなこつぶらに

   愛くるしい”會空”の手作りクマ

2021-084:顔

ひとけなき参道ゆけばくさまくら夕顔の白ただにしるけし

2021-085:蘇

牛乳のあまると聞けばいにしへのレシピひもとく蘇ははやりもの

2021-086:簿

空欄の埋まらぬままに署名簿をたづさへ午後をひとり歩きぬ

2021-087:苦手

アジアの風身ぬちに消しぬ香菜の苦手なひとと店を選るとき

2021-088:膚

水指のふれえぬ膚にいくすぢの慾の裂け目のいたましきこと

2021-089:粋

粋筋とみゆるおうなの炎昼にとほざかりゆく白き足袋はも

2021-090:稼

ブラジルゆ出稼ぎに来し職工ら祖先の国に仕事をなくす
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題詠100★2021 071~080 [題詠100★2021]

2021-071:女

これだから女はといふ蔑みをはねかへし咲く白きさうびは

2021-072:物語

幽霊と呼ぶに近しきたましひが物語りするみちのくの夜

2021-073:滞

ぬばたまの夜更けのメール仮放免の知りびとになほ滞在許可出でず

2021-074:圧

ひさかたの旨味の冬をつめこんで圧力鍋はたちまちに響(な)る

2021-075:忌

山椿忌(さんちんき)かさねた本のかたはらを小(ち)さきなにかが走つていつた

2021-076:ごみ箱

分別のごみ箱のうへぐちやぐちやの袋ひとつをはつか蔑む

2021-077:上

くさぐさの影もつ町の玄関としてありぬべし上野駅はも

2021-078:菓

たわいなきそのひとことは水菓子につきたる指のへこみにも似て

2021-079:隠

ゆふづつはたれも一人とおもふとき木の間隠れに街を見下ろす

2021-080:尚

いまもなほ虐げらるる沖縄に尚真王のすゑの説くみち
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題詠100★2021 061~070 [題詠100★2021]

2021-061:いっぱい

子らの手に皿いつぱいの給食をおもひつつ撮るおにぎり写真

2021-062:禍

禍ひの闇鍋たうに吹きこぼれ喰うても飢ゑるほかなし民は

2021-063:正

まつさきに放り出されて浮き輪なくただよふものを非正規といふ

2021-064:笹

厨辺を風おとなへば笹刺しのふきんを掛けて夏を待ちをり

2021-065:否

肯定も否定もされずにはたづみ行くかた知らぬだうだうめぐり

2021-066:ウルトラ

をりふしにエスディージーズが気にかかるウルトラマリンのこの星にゐて

2021-067:炒

歳のかず十をひとつに置きかへて味せぬままの炒り豆を食ふ

2021-068:去

ふたたびを弥生のくれば去来するもの多からう逃れ来しひと

2021-069:農

あらたまのタイムラインに一鍬とふ農の祭事のめづらしきこと

2021-070:筋

そこそこに相づちをうつ手もとにはさやいんげんの筋をとりつつ
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題詠100★2021 051~060 [題詠100★2021]

2021-051:グリーン

ゆくりなきZoom会議の支度なくグリーンバックのソフトをさがす

2021-052:燃

炭燃ゆるさまを知らざる子どもらにいかにか説かむ「冬はつとめて」

2021-053:工

来た道を曲げれば影は見えずなり徴用工も原発事故も

2021-054:娘

娘ひとり持ちたかつたといふ女(ひと)よ負はすであらう夢の重荷を

2021-055:拾

拾ひきし松ぼつくりをころがせばあの里山の風よみがへる

2021-056:速

ツイデモの速さにつかずはなれずの距離をとりつつ我の日常

2021-057:順番

あなにくし力もつもの隙あらば順番の頭(づ)に割り込まむとす

2021-058:箋

巣ごもりを届く茶請けに添へられし一筆箋にさくらはなびら

2021-059:復

ブランクのあけば復帰のむつかしく路上さまよふ若きらの増ゆ

2021-060:六

二十時にネオン消えれば静もれる街をみおろす十六夜あかし
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題詠100★2021 041~050 [題詠100★2021]

2021-041:斜

水仙のひともと咲きぬ斜交ひになるとふことのいまを思へり

2021-042:該

要件の該(そな)はりしかど行き処なきまま独り居に身罷りしとぞ

2021-043:慕

ささやかな争ひのある岩場には横恋慕せしペンギンのゐて

2021-044:平均

たどたどと平均律の流れくる窓辺にあはき陽のかげのさす

2021-045:項

あらためて見入る項(うなじ)のかげりもて現とならむ清輝のをんな

2021-046:描

一閃の黒はひろがり猫の背のまろみを描くインクのにじみ

2021-047:旦

憂きことのひしめく間(あひ)に文旦の色あかあかと師走の紙面

2021-048:出

肉まんを買ひに出づればゆくりなく港のかたゆ汽笛のひびく

2021-049:徒

徒労とふことばを辞書ゆ消し去りし歩みのうへに沖縄はある

2021-050:技

捨てられし技能実習生あまた生くるためとて罪に問はるる
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題詠100★2021 031~040 [題詠100★2021]

2021-031:主

あの日から十年を経るも主なき家に生計(たつき)の匂ひのこれる

2021-032:恒

地の果てに何を見しかはひとの世のなべてをつつむ恒河(ごうが)のほとり

2021-033:多分

三日目も多分いけると独り居に鍋の底ひの菜をあたたむ

2021-034:信

読み分けて信おくことのむつかしさ内にも外にもQあまたなり

2021-035:替

爆弾のやうな一語を替へるとき歌はたちまち生気をなくす

2021-036:裁

うはずみはつねに美(うま)しきそらみつやまとの国に自裁のおほし

2021-037:送

勝ち取りしデモクラシーの羨しかり米国の友にふみ送るとき

2021-038:反

ものいへばこだまのごとく反日と呼ばるることの常とはなりぬ

2021-039:憶

あの年の記憶はときによみがへる声なく叫(おら)ぶ悪夢のうちに
 
2021-040:コミック

うつしよはコミックを超えかしのみのひとり飯なと流行りとなりぬ
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題詠100★2021 021~030 [題詠100★2021]

2021-021:国会

歯切れよき問ひこそよけれ倦むほどに応へのうすき国会質疑

2021-022:族

民族のたがへば幾重の差別あるハンセン病展示かくまで重し

2021-023:導

誘導の是非を問はるる判決をいたみつつ聞く九年目の冬

2021-024:脚

橋脚のもとに建たなむ不夜城をおほうて厚き雲たれこむる

2021-025:昼

つつかけの嬢コンビニにものを買ふけしきもありぬ色街の昼

2021-026:挙

風船をもらひし記憶あざやかに幼き日々の選挙はありぬ

2021-027:宜

上つかたの翻意せざればかへりこぬ宜野湾のやま辺野古のうみは

2021-028:立

春立ちて路地にななめの陽のさせば枇杷のつぼみの柔毛つややか

2021-029:姓

たかだかにももとせを経し「同姓」を絡めとつたる「家」は「絆」か

2021-030:ウイルス

膨れゆくコロナ差別よ購ひしマスクの文字に「ヘイトはウイルス」
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題詠100★2021 011~020 [題詠100★2021]

2021-011:外

ベランダに外(と)を見わたせば植栽のかげムスカリのひそか息づく 

2021-012:洩

見上ぐれば目に追へぬかげ木洩れ日のうちに目白の鳴きかはしをり

2021-013:匹

たむろする人のおほきに匹如身(するすみ)の在り処を思ふ炊き出しの夜

2021-014:料理

いつかうに料理のうでの上がらざりテイクアウトの手軽に慣れて

2021-015:机

ぬばたまの黒岩祐治うつそりと机にひろぐ不可能の絵図

2021-016:拡

ひとけなき部屋に戻れば翳りたる室のうちにぞ冬は拡がる

2021-017:ガラス

おほき手のよせてはかへすなりはひにソーダガラスのまろき手ざはり

2021-018:区

さきくさの中区に住めばハマのかげカジノ・ドヤ街・巨き市庁舎

2021-019:未

夏の日の未の刻にまどろめば草の匂ひに陽もかげりつつ

(本歌:夏の日の未の刻もすずしけれ繻子の芝くさ縞萱の帯(与謝野晶子))

2021-020:忙

忙しなくひとの行き交ふ改札をよけてかたへの花になぐさむ
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題詠100★2021 001~010 [題詠100★2021]

2021-001:求

春立ちぬ客待つ午後は皿の上の求肥にやはき陽のさしにけり

2021-002:悲

ことはられ断られつつ街頭に立ちたる日々を否決の無慈悲

2021-003:店

人をらずお使ひものの蘭ばかり謎めく店はコロナに耐へず

2021-004:普通

ひさかたを文箱の底にしまはれし普通はがきに一円を足す

2021-005:絵

おほかたのメールに済めば抽斗の奥にねむれる蒔絵の文箱

2021-006:宛

転送を止めてひととせ宛てどころ知られたくなき縁もあれば

2021-007:隔

ひととせをはやりやまひに隔てられおぼろにかすむあの夏の午後

2021-008:案

民草の怒りをよそにいなむしろ河井案里はやうやう辞めぬ

2021-009:きっかけ

おそらくは生涯ぬけぬきつかけの棘をかかへてゆふぐれに佇つ

2021-010:回

おほでらに護摩のほのほの炎々と回向の波はおぼろにかすむ

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