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歌誌月光83号掲載歌「北へ」 [歌誌月光]

熱あつのナポリタン食む昼さがりTAKEYAの椅子に猫をらずけり

野毛山のだらだら坂を秋ひと日獅子の毛並みに秋の陽だまり

軽口と酒さしかはす夕めしは寿町の町中華にて

京急の各停にゆく横須賀は海のいろさへ穏やかにあり

近すぎてつひ訪はざりしレストランコトブキに食むさいごの午餐

高層の窓辺に見ゆる関内の夜明けの空も変はりゆくべし

不夜城と賭場を迎ふる変容をよそ目にみつつさらば横浜

床うへは二十センチにひとすぢの水跡のある被災の部屋は

内釜の水の目盛りを測りかね厨の床はわづかにかしぐ

丘の上の市庁舎に拠り見しといふ眼下の街に水寄せくるを

犠牲者の魂をとぶらふみほとけは凪の入り江を見下ろして立つ

宵のくち店みせははや閉まりをり明かりのなくて星見ゆるまち

夜の車窓に松の樹影のくろぐろと津波の夜はかくもあらなむ

空き地とふ空き地に仮設建ちしとぞ小さき園生にブランコ揺れる

つくばひの氷のとけぬ九時十時はるかに響むひよどりのこゑ


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歌会の歌 [歌誌月光]

2024年2月 題詠「なく」
泣く、哭く、鳴く等、如何様にも。
文言を詠み込む必要はありません。

泣きごゑの出で来ぬ口をうすくあけラファの子らねむる遺体袋に

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小学6年の頃。
担任の教員が歌を詠む方で、自作の二首を紹介しつつ、歌について解説されたことがありました。

一首目は弓をたしなむ方だったので、年末にたまった分を洟を垂らしながら引く歌。

二首目は字余りを解説され、雪の日の引き込み線?に電車を誘導する運転士の歌で、結句が「機関士の目動かず」(10字)だったことは今でも覚えています。

2月の歌会はそのことを思い出し、四句にあえて字余りを臆せず詠みました。

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短詩の風2024 [twitter]

床うへは二十センチにひとすぢの水跡のある被災の部屋は

丘の上(へ)の市庁舎に拠り見しといふ眼下の街に水寄せくるを

犠牲者の魂をとぶらふみほとけは凪の入り江を見下ろして立つ

#短詩の風
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