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うたつかい37号(2021年秋号~終刊号)掲載「恋歌」【フェアリーテールの夜】 [うたつかい]

きしんでる林檎の内部とざされてひらかれてある星のささやき(岡田濫)

独白はなづきをめぐりセザンヌの卓上にあるたしかふたしか(紫苑)

眼差しのむこうにひらく人影の青いりんかく クラナッハ(岡田濫)

日を浴びて熟みくづれたるラ・フランスをみなの腹は贄のごとしも(紫苑)

欲望の黒いさえずり焦げたパンのみくだす門指のあとさき(岡田濫)

革命のとほくにありて部屋べやはとざされてゐる冬のめぐりに(紫苑)


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うたつかい37号(2021年秋号~終刊号)掲載歌 [うたつかい]

【自由詠 日暮れに】

沙羅の花ほとりと落つる目のさきに酔ひたる老いの座す昼さがり

ひとけなき野比の浜辺ゆひろひ来し貝は末期の砂をはきだす

値下がりの三浦すいくわをひとパック買うてわたしの夏は畢んぬ

ゆりのきの黄葉はいつ公園をゆけば降り来る詩情ひとひら

もの売りのこゑに応はず籠もりゐる部屋のうちにも日は暮れゆきぬ



<テーマ詠【結】>

アマビエの尾のにじみけりひとけなきゆふべの杜に神籤はゆれる


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うたつかい36号掲載「恋歌」【いちごつみ ガブリエル・デストレとその】 [うたつかい]

夏の陽は土にあまねくふたたびを身にあらはるるすぎゆきの創(紫苑)

葉をかえす言葉のかげのかさぶたの傷あらたまる少年のこと(岡田濫)

まなぶたのかげを拭へるマグダラのマリアの髪のかそかなひかり(紫苑)

草をわけ光のすすむ透明な嵐のなかで立ちあがる声(岡田濫)

あからしま風すぎしのち唇のことばをさらふゆふべの鐘は(紫苑)

おりてくる夜のいとしさ唇のあいだをもれる時の横断(岡田濫)

うたつかい36号(2021年春号)掲載歌 [うたつかい]

【自由詠 TAKEYA】

マスターの問はずがたりはヨコハマの戦後をうつす一隅にゐて

空白の歳月(とし)を問うてはならぬとやイセザキに在るものの暗黙

シャッターに六十年(むそとせ)あまりを謝するとふ貼り紙にじむイセブラのいま

珈琲を煮しめたやうな店ぬちにレイ・チャールズのだみごゑ満つる

モモちやんの粗き手ざはりなつちやんの吾をよけぬこそ刻(とき)のときなれ

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<テーマ詠【旅行】>

風に乗り野山へ散らふたましひのわたしを見守(まも)るせんねんさくら

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うたつかい2017年秋号掲載歌(テーマ詠) [うたつかい]

<テーマ詠【学校】>

この時代(とき)を負うて羽ばたけあかねさすむらさき匂ふSPARの鳩

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テーマ詠「学校」は悩んだ。
高校までは小学校に転入してからの持ち上がりで、
小学校時代のいじめの記憶もあり、詠みたいものではなかった。

大学については過去に詠んだ歌もあったが、
最近は「モリカケ問題」の加計孝太郎氏、
現政権の鶴の一声(閣議決定)で母校初の最高裁判事になった木澤克之氏と、
たいそう不名誉なことになっていて、題材にとても困った。

そんな中で、今年3月、池袋でのヘイト(差別扇動)街宣に対し、
一般の学生さんにも声をかけて監視アクションに参画した
SPAR☆(@SPAR38406892 平和のために行動する立教大生の会)を詠みました。

卒業生として、彼らを誇りに思います。

「あかねさす」は「紫」にかかる枕詞。
「紫匂ふ(匂える)」は校歌から採りました。
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うたつかい2017年春号掲載歌(テーマ詠) [うたつかい]

<テーマ詠【お店】>

雨あしを透かすガラスの赤いろの時をとどめてひづむ階梯

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うたつかい2016年秋号 [うたつかい]

<題詠>オノマトペ

伸ばす手にかかる寝息のすんすんと 終(つひ)にちかづく秒針のこと


<おすすめの歌集>『水の皮膚』宮野克行:著/ながらみ書房

破調の多い口語短歌の集積は、水のように、きまった形を持たず、読み手によって姿を変える。
リアリズムを根底に、選び抜かれた語彙で普遍を模索する姿勢が垣間見える。
硬質な不均衡。いけない本よね。

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単行本: 155ページ
出版社: ながらみ書房 (2006/06)
言語: 日本語
ISBN-10: 4860234057
ISBN-13: 978-4860234058
発売日: 2006/06

直立のその沈黙の窒息のなみだってゆく青空
せせらぎをまたいで青く錆びてゆく心電図見え深く
細長くこう上体をもたせかけたわめてゆける銀の燭台
意味を躱す交わされる意味と薄い味の水に舌さす
くりかえしくりかえし見る水の皮膚のくりかえされる水の空白


うたつかい2016年夏号掲載相聞歌【風は風なの】 [うたつかい]

わくら葉を目に追うてゐる微熱から解き放たれぬ 指 いつぽん(紫苑)

いみしんの「失恋」の意味あやうくてあなたを前にふるえいること(岡田濫)

くさぐさのことわりを捨てふたたびの夜のうしほに影は溶けつつ(紫苑)

さざなみの 夜囚われし しとねとも ルリカラクサの風は風なの(岡田濫)

咲きいそぐ花はどうして 浅き夜をああいふことになつてしまつた(紫苑)

死に急ぐな問う凸ぴんの わだつみの、風の風なる。ビンディーのある(岡田濫)


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https://www.flickr.com/photos/mayor_of_clutch/8704514950

うたつかい2016年夏号掲載歌(テーマ詠) [うたつかい]

<テーマ詠【家具・家電】>

黙ののち吐くエアコンのため息の ひと夏を抱く猫のいううつ

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うたつかい2015年春号掲載歌 [うたつかい]

やみのよに行く手は知らね散り交うて川面をそむる花のうたかた

なにとなき日を少しづつ侵しゆく唐棣(はねず)よナガミヒナゲシの群れ

おもふさま淫らになれと言ひつのるをとこの憎しさくらあめ降る

瓶に泣く美女ざくらあり地に伏する芝ざくらありいづれかなしき

すりきれた真昼の月にかひまみぬ永遠のあはひに振りかはす手は






<テーマ詠【春】>

誘はれて身をひらくごと春風にひと枝ぐるみ山桜桃(ゆすら)くれなゐ

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