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歌誌月光82号掲載歌「舌の記憶」 [歌誌月光]

にはたづみとつくにびとの厨より美味(うま)かるものの包みがとどく

カダユフをつまめば指にピスタチオしたたるまでのみどりあざやか

舟形のはんぶんあればこと足りる昼餉のピデをゆつくりと噛む

スパイスが鼻を抜ければハマの辺にクルディスタンの風吹きわたる

雨もよひフェスにあがなふミャンマーのたまごカレーのやさしき味は

キルギスはいづこにあらむコーヒーにハートを描くひとのふるさと

離(か)れて住む国のあれこれヒジャブゆへをみな殺むる「革命」ははや

やうやくに逃れ来たるもそらみつやまとの国はかくもつめたし

働けず紡ぐもならず手づくりを売ることのみを生計(たつき)といふか

匙に分くる菓子を個食につくりかへ日本の常にあはせしといふ

この国に虐げられしも型抜きにさくらを選むひとのかなしき

秋闌けてタイムラインを埋めつくす今あらそひの地を爆ぜること

ふたたびの冬を迎ふるザポロジエに取り残されし犬のまなこは

天井のなき囚獄(ひとや)ともうつせみの世にありなしのガザ地区は晴れ

弾き語りの『Russians』流るふたたびを罪なき子らの死にゆくゆふべ



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