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題詠100★2022 ブログトップ

題詠100★2022(題詠百首) [題詠100★2022]

2022-001:来

ふるさびた根来の鉢に盛る寿司は繰りかへさるる祭りの記憶

2022-002:扱

逆巻けば屋を押し流し老い松を根扱ぎにしたる波を忘れず

2022-003:巡

あてどなく巡るモールは春色のそこ此処に咲くファストファッション

2022-004:積

とりどりの積み木をふいに蹴倒して駆け出す子らのまなかひに春

2022-005:時期

やうやくに寒の戻りの去りゆけば時期おくれなる緋ざくらひとつ

2022-006:瞳

うち続くいくさを逃ぐる幼な子の瞳にうつる瓦礫の街は

2022-007:数

しつたまき数にもあらぬ身にしあれば手かずをかけぬ終はり思ほゆ

(本歌)しつたまき数にもあらぬ身にはあれど千年にもがと思ほゆるかも(山上憶良)

2022-008:ひたすら

空白の春のたにまをやり過ごし野蕗の皮をひたすらに剥く

2022-009:炊

炊いたんと呼べば菜つ葉もなにとなく風情おぼゆる関東そだち

2022-010:景色

釉薬のとろり織りなす景色とも志野の湯のみを両手につつむ

2022-011:他

匿名といへども他人行儀ほどがよかれと思ふネットの議論

2022-012:軒

この年は近間のみせの軒下につばめ来たらず夏はおぼろに

2022-013:いっそ

腰の句のあたりでどうにもゆきづまるいつそ前後を入れ替へやうか

2022-014:近

「駅近」は歩いてみねば分からぬとあらためて知る急坂の家

2022-015:贈

贈呈の文字いろあせし古本をあがなふことのなどかさびしき

2022-016:若者

短歌にはよからぬものと師の言へりい抜きら抜きの若者ことば

2022-017:代

「代返」は死語にあるらし駅頭の広告にみる時のうつろひ

2022-018:足

水ぬちの足の動きもいそいそとひよこは母のあとを追ひけり

2022-019:諾

たはやすく葬られたるいのちあり認諾といふ二文字をもて

2022-020:段階

二段階認証のたびセキュリティとわづらはしさの天秤を思ふ

2022-021:居

独り居の部屋をいろどるウクライナカラーの菊はほのかに香る

2022-022:挑

猛牛に挑むがごとく立ち尽くすマンハッタンの少女りりしき

2022-023:ロマン

ファシズムの雲が地上をおほふときロマン・ロランの言よみがへる

「国家は祖国ではない。それを混同させるのは、それによって儲ける連中だけだ。」
「 われわれは戦い、そして勝利者とならねばならぬ。正義とは正しい者が勝つことだ。」

2022-024:彫

ウィンドウに鎌倉彫を眺めつつ若宮大路をそぞろ歩きぬ

2022-025:乳

乳清(ホエイ)まで余すことなく使ひ切る牧場(まきば)の昼のメニューあれこれ

2022-026:紹介

住み込みとふ働きかたを知り初むは「大沢家政婦紹介所」なり

2022-027:託

託児所も保育も足りぬ横浜に保留児童の新語生まるる

2022-028:中央

かぎろひの『斜陽』のをはりさきくさの中央線を省線と呼ぶ

2022-029:秘

そのうちは秘湯でゆるり過ごさうと約せしままに三年を経りぬ

2022-030:以

ゐろり端に座したる老いはとつとつと座敷わらしの所以をかたる

2022-031:あたふた

大鴉ひとこゑ鳴けばあたふたと餌をついばみ雀は去りぬ

2022-032:偏

禾偏のまとへる風は秋のいろ見わたすかぎり稲田がゆれる

2022-033:粗

不ぞろひの野菜の群に粗塩をふれば厨は夏の香に満つ

2022-034:惹

見まはせば人目を惹かぬ服ばかり「その時」に着し被害者の服

「その時何を着ていたか」
https://www.bbc.com/japanese/video-42699852

2022-035:日常

情報とフェイクニュースのせめぎあふ非日常とのはざかひにゐて

2022-036:醜

色街のありやう映す「醜業」はまつりごとには体よきことば

2022-037:述

散らばつたティシュペーパーを前にして上目遣いは猫の供述

2022-038:襲

襲撃のはての被曝かひそやかな移送のさきのゆくへは知れず

2022-039:グループ

とめどなく論破たくらむ人のいて荒れたりと聞くグループチャット

2022-040:探

きしきしと階段の鳴る乱歩邸かげ見据ゑつつ探偵はゆく

2022-041:江

たまはりし江戸切子なるうつはあり暑さの午後にくずきりを盛る

2022-042:懸

かび臭き研究室の窓辺より鈴懸の葉のひるがへる見ゆ

2022-043:小説

いつしかに疎遠となれば安つぽい小説本のやうな結末

2022-044:把

二把買へば安くなるとはいひながら始末になやむ独り居のこと

2022-045:辿

舌先に辿る聖書は閉ざされし園のくらしのなぐさめにやあらむ

2022-046:丹

アラザンの名の浮かび来ず仁丹と検索かくる買い物のまへ

2022-047:矢印

矢印を進めば街の猫会議ひとよの継ぎ目に会うてみたしよ

2022-048:陶

使ふなら陶器がよしと揃へたる茶碗小鉢のなべて重しも

2022-049:綴

綴じ紐のかはりとこよりをいくすぢも作れるひとのげになつかしき

2022-050:棒

棒読みの答弁つづく市議会の堂々めぐりはつくづく長し

2022-051:かもめ

ロシア語に罪はなしとて読みかへす『かもめ』に見つるコスチャの苦悩

2022-052:茂

くれたけの茂吉のうたに知り初むる山蚕の繭は夏草のいろ

2022-053:映

イセザキの喫茶にひとりインスタの映えにはとほきナポリタン食む

2022-054:雰囲気

たれも彼も諾はむへるとふ雰囲気をかもし出したり五輪の記録

2022-055:閑

まん防は去れど遠出もためらはれ閑もてあます連休の午後

2022-056:亡

改憲のこゑの日ごとに高まれば亡ばんとする自由かなしゑ

2022-057:憧

生活の不便をわすれひとときを憧れてみる山家のくらし

2022-058:毒

山菜のあひまに生うるマムシグサおぐらき苞に毒をふふみて

2022-059:出身

出身を明かす人気のわかものを画面に見つる我はマジョリティ

2022-060:濡

いつのまを官に食ひ込む民ならむ濡れ手に粟のことばが浮かぶ

2022-061:継

名にし負はばむごき継子の尻拭ひ風に聞きたる少女のうはさ

「2018.3.2」を覚えてますか ラッパー般若さんが綴った事件:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASQ4P74CZQ4FUTIL03B.html 

2022-062:シンデレラ

不貞たがにみえて希みを捨つるなくシンデレラ立つコーラスライン

2022-063:伸

伸ぶるとて酷暑のときに紫陽花を伐りたるひとのこころなきこと

2022-064:罵

ひのもとに差別はありぬ川崎の罵声のかどに我は立ちつつ

2022-065:枚

あふさかに引きあぐるひと枚方をひらかたと読むを我は知らざり

2022-066:平凡

ひたひたと三島の影はよみがへり平凡パンチに見る胸像は

2022-067:密

密室の協議は長テーブルの果て帝国主義の影は座したり

2022-068:帝

プトラーと呼ばるる帝ネットには真偽わかたぬ病のうはさ

2022-069:大事

井のうちのこゑの大事(だいじ)となりぬべしいますぎゆきを書き換へるとは

2022-070:儲

たはやすき儲けばなしの末に待つ裁きを悔ゆるあまた受け子は

2022-071:トルコ

持ち帰りのケバブに豆をつけあはせトルコ料理をひとり愉しむ

2022-072:遣

遺されしことばの記録をいかに見る癌に死したる馬場町長の

2022-073:歪

手になりしはつか歪みのよしといふ李朝の白磁まなかひに座す

2022-074:荷物

荷物より犬猫を抱く難民のげに多きこと異国の駅に

2022-075:償

償ふにいのちのあるを旨とする懸賞を読む爆撃のあさ

2022-076:睨

見上ぐれば毘沙門天は山門のうちにおぐらき世を睥睨す

2022-077:与

やくそくを守れぬさがを思ひをり形見の布をいだく与ひように

2022-078:青春

はてしなき野心のゆくへ青春の蹉跌はいづくにもありぬべし

2022-079:尋

たまさかに尋ね当てたる沢の辺にクレソン生ふる一角のあり

2022-080:疎

みちのくはいにしへびとの知恵を経てくらしのうちの疎水はありぬ

2022-081:比喩

分かち合ふべき禍ごとの比喩としてスクリーンには「TSUNAMI」の一語

2022-082:涼

差し入れる夕陽を避けてぬばたまの猫は涼しき寝場所をさがす

2022-083:ドレス

むつかしき仕事にドレスコードあり距離と天気を考えあはす

2022-084:眺

マンションと風俗街の下町にたうてい住めぬ眺めよき部屋

2022-085:浴

浴槽とトイレのひとつ部屋にある都会のすみにちひさく暮らす

2022-086:鮮明

鮮明な画像のゆゑにモザイクのをちこちにあるブチャの街角

2022-087:堕

入管に勤めるまでは人であらういつしか堕つる無間地獄は

2022-088:耽

いま少しあとすこしとて読み耽りしらしらあけに結末みたり

2022-089:赴

折り返しを過ぎて辺地に赴任するしなやかならむ生をともしむ

2022-090:しぶき

かりそめの静けさもどる街道に散る血しぶきは洗はれてをり

2022-091:秩

あしひきの山ふところに抱かれて秩父錦の味をほめつつ 

2022-092:冷

横文字のラベルの瓶はお冷やとふことば馴染まぬミネラルウォーター

2022-093:無駄

なにごとも無駄にはあらずこの世には金を生まない学問がある

2022-094:誓

いつはりの誓ひ立つこそかなしけれ『ラ・ノビア』聞く五月のゆふべ

2022-095:凄

凄腕にあらねどたしかな目をもちて夜学教ふる老教師あり

2022-096:飯

勢ひで買つてひと晩てまをかけ筍飯はことさらうまし

2022-097:特別

放免はすれどもおよそ支へなく特別許可を出さざる国は

2022-098:酔

春たけて人出のもどる公園に馬酔木の花はことしも咲きぬ

2022-099:白

夜職のゆきかふ街は明け空のほの白むころやうやく眠る

2022-100:翌

とことはに檜(ひのき)となれぬ翌檜(あすなろ)は成さざるものの味方なるべし
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