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歌会の歌 [歌誌月光]

2024年3月 題詠「まつり」

神棚ゆ何を見つるや慾得の見えかくれする選挙事務所に

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歌誌月光83号掲載歌「北へ」 [歌誌月光]

熱あつのナポリタン食む昼さがりTAKEYAの椅子に猫をらずけり

野毛山のだらだら坂を秋ひと日獅子の毛並みに秋の陽だまり

軽口と酒さしかはす夕めしは寿町の町中華にて

京急の各停にゆく横須賀は海のいろさへ穏やかにあり

近すぎてつひ訪はざりしレストランコトブキに食むさいごの午餐

高層の窓辺に見ゆる関内の夜明けの空も変はりゆくべし

不夜城と賭場を迎ふる変容をよそ目にみつつさらば横浜

床うへは二十センチにひとすぢの水跡のある被災の部屋は

内釜の水の目盛りを測りかね厨の床はわづかにかしぐ

丘の上の市庁舎に拠り見しといふ眼下の街に水寄せくるを

犠牲者の魂をとぶらふみほとけは凪の入り江を見下ろして立つ

宵のくち店みせははや閉まりをり明かりのなくて星見ゆるまち

夜の車窓に松の樹影のくろぐろと津波の夜はかくもあらなむ

空き地とふ空き地に仮設建ちしとぞ小さき園生にブランコ揺れる

つくばひの氷のとけぬ九時十時はるかに響むひよどりのこゑ


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歌会の歌 [歌誌月光]

2024年2月 題詠「なく」
泣く、哭く、鳴く等、如何様にも。
文言を詠み込む必要はありません。

泣きごゑの出で来ぬ口をうすくあけラファの子らねむる遺体袋に

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小学6年の頃。
担任の教員が歌を詠む方で、自作の二首を紹介しつつ、歌について解説されたことがありました。

一首目は弓をたしなむ方だったので、年末にたまった分を洟を垂らしながら引く歌。

二首目は字余りを解説され、雪の日の引き込み線?に電車を誘導する運転士の歌で、結句が「機関士の目動かず」(10字)だったことは今でも覚えています。

2月の歌会はそのことを思い出し、四句にあえて字余りを臆せず詠みました。

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短詩の風2024 [twitter]

床うへは二十センチにひとすぢの水跡のある被災の部屋は

丘の上(へ)の市庁舎に拠り見しといふ眼下の街に水寄せくるを

犠牲者の魂をとぶらふみほとけは凪の入り江を見下ろして立つ

#短詩の風
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歌会の歌 [歌誌月光]

2024年1月 題詠「沈む」

泥の船あやつる人のつらなりは亡者のかげを長く曳きたり

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画像出典:https://www.nishinippon.co.jp/image/738069/


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歌誌月光82号掲載歌「舌の記憶」 [歌誌月光]

にはたづみとつくにびとの厨より美味(うま)かるものの包みがとどく

カダユフをつまめば指にピスタチオしたたるまでのみどりあざやか

舟形のはんぶんあればこと足りる昼餉のピデをゆつくりと噛む

スパイスが鼻を抜ければハマの辺にクルディスタンの風吹きわたる

雨もよひフェスにあがなふミャンマーのたまごカレーのやさしき味は

キルギスはいづこにあらむコーヒーにハートを描くひとのふるさと

離(か)れて住む国のあれこれヒジャブゆへをみな殺むる「革命」ははや

やうやくに逃れ来たるもそらみつやまとの国はかくもつめたし

働けず紡ぐもならず手づくりを売ることのみを生計(たつき)といふか

匙に分くる菓子を個食につくりかへ日本の常にあはせしといふ

この国に虐げられしも型抜きにさくらを選むひとのかなしき

秋闌けてタイムラインを埋めつくす今あらそひの地を爆ぜること

ふたたびの冬を迎ふるザポロジエに取り残されし犬のまなこは

天井のなき囚獄(ひとや)ともうつせみの世にありなしのガザ地区は晴れ

弾き語りの『Russians』流るふたたびを罪なき子らの死にゆくゆふべ



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歌会の歌 [歌誌月光]

12月 題詠「生誕」

ひのもとの貧苦を生くる難民のをみなの子にも生誕祭(なたら)はありぬ


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歌会の歌 [歌誌月光]

11月 題詠「手帳」

はつふゆに職うしなへばゆくりなく空白となるウェブカレンダー
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短歌とわたし [歌誌月光]

 なぜ歌を詠むかを突き詰めて考えたことがない。やむにやまれぬ理由や動機から歌を始めたわけではないからだ。

 日本文学科出身でもなく、「折々のうた」ぐらいしか読んだことのない私が歌を始めたきっかけは、短歌専門SNSが開設されたというニュースに興味を持ったからだった。ただネット短歌は一長一短で、初心者でも臆せず参加できる反面、仮名遣いや文法上の誤り、詠み癖などを指摘してくれる人がいない。

 知人に勧められた入門書は頴田島一二郎『作歌はじめのはじめ』。基礎知識ゼロの私にとって、時系列的な解説や、文法・書式の記載は有り難かった。古書店でもとめた生方たつゑ『短歌をたのしく 作歌と鑑賞』は、特に自註と鑑賞の章が興味深かった。

 しばらく添削サイトで指導を受けた後、誘われるまま結社に入った。

 結社にいてよかったと思うのは、私事で作歌が難しい時期があった時、出詠の締め切りがあったことだ。無理やり歌を作るのがよいかどうかは人それぞれだろうが、私の場合、締め切りがなければそのまま歌をやめていたかもしれない。

 助詞の使い方や連作における品詞の配置など、表現技法の学びは結社に負うところが大きい。逆に、叙情的な自己表現を好まないのと、内容の縛りはなかったので、テーマや事物の切り取り方は我を通して今に至る。いったん手を離れたら読み手に委ねるものと教わったので、自解を求められる歌会は苦手だ。

 三十一文字が自分にとって程よい長さであることも、歌を続けている理由の一つだろう。長文を書くのが苦手な反面、跳躍力に欠けるので、俳句という選択肢も最初からなかった。ただ、作歌が楽しくいくらでも作れるという時期は最初からなく、歌稿に苦労する点は未だに変わらない。

 そんな風でつかず離れず、なぜ詠むかは「身近に歌があるから」というくらいの理由でよいのではないかと、最近は思っている。

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祭り [歌誌月光]

停車場に人のあふれてみちのくはみじかき夏の祭りさまざま

ルドベキア群れ咲く山を下りゆけば海辺の町は炎暑にありぬ

海の上(へ)に繰り出だしたる船ぶねの満艦飾のひかりなないろ

着流しの友いささかを誇りかな午後はにはかに祭りめきたる

人混みをいとうてひとり夕すずみとぎれとぎれの遠花火きく

露台より望むみなとの夜は更けてスターマインに空のあかるむ

足もとの闇をかそかに揺らしつつ立ちのぼりくるこほろぎのこゑ

まつりにもわかうどの手を借りる地に震災いまだをはりなきなり

いそがしき午後のあひまにかき氷ふたつたづさへ友もどり来ぬ

四とせぶり道中踊りの道なりをあいさつの輪のをちこちに咲く

駅まへの目抜き通りに九つの山車ならびゐる旧のたなばた

こだはりの武者絵を透かすらふそくの灯に家康のまなこするどし

さんざめく山車をかこみてグルーヴは笛と太鼓のからみあひつつ

練り歩きをへ脱ぎ捨てし白足袋のすこしよごれて夏は畢んぬ

ひとげしき絶えればすだく虫のこゑいやまさりつつ秋たちにけり

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