短歌とわたし [歌誌月光]
なぜ歌を詠むかを突き詰めて考えたことがない。やむにやまれぬ理由や動機から歌を始めたわけではないからだ。
日本文学科出身でもなく、「折々のうた」ぐらいしか読んだことのない私が歌を始めたきっかけは、短歌専門SNSが開設されたというニュースに興味を持ったからだった。ただネット短歌は一長一短で、初心者でも臆せず参加できる反面、仮名遣いや文法上の誤り、詠み癖などを指摘してくれる人がいない。
知人に勧められた入門書は頴田島一二郎『作歌はじめのはじめ』。基礎知識ゼロの私にとって、時系列的な解説や、文法・書式の記載は有り難かった。古書店でもとめた生方たつゑ『短歌をたのしく 作歌と鑑賞』は、特に自註と鑑賞の章が興味深かった。
しばらく添削サイトで指導を受けた後、誘われるまま結社に入った。
結社にいてよかったと思うのは、私事で作歌が難しい時期があった時、出詠の締め切りがあったことだ。無理やり歌を作るのがよいかどうかは人それぞれだろうが、私の場合、締め切りがなければそのまま歌をやめていたかもしれない。
助詞の使い方や連作における品詞の配置など、表現技法の学びは結社に負うところが大きい。逆に、叙情的な自己表現を好まないのと、内容の縛りはなかったので、テーマや事物の切り取り方は我を通して今に至る。いったん手を離れたら読み手に委ねるものと教わったので、自解を求められる歌会は苦手だ。
三十一文字が自分にとって程よい長さであることも、歌を続けている理由の一つだろう。長文を書くのが苦手な反面、跳躍力に欠けるので、俳句という選択肢も最初からなかった。ただ、作歌が楽しくいくらでも作れるという時期は最初からなく、歌稿に苦労する点は未だに変わらない。
そんな風でつかず離れず、なぜ詠むかは「身近に歌があるから」というくらいの理由でよいのではないかと、最近は思っている。
日本文学科出身でもなく、「折々のうた」ぐらいしか読んだことのない私が歌を始めたきっかけは、短歌専門SNSが開設されたというニュースに興味を持ったからだった。ただネット短歌は一長一短で、初心者でも臆せず参加できる反面、仮名遣いや文法上の誤り、詠み癖などを指摘してくれる人がいない。
知人に勧められた入門書は頴田島一二郎『作歌はじめのはじめ』。基礎知識ゼロの私にとって、時系列的な解説や、文法・書式の記載は有り難かった。古書店でもとめた生方たつゑ『短歌をたのしく 作歌と鑑賞』は、特に自註と鑑賞の章が興味深かった。
しばらく添削サイトで指導を受けた後、誘われるまま結社に入った。
結社にいてよかったと思うのは、私事で作歌が難しい時期があった時、出詠の締め切りがあったことだ。無理やり歌を作るのがよいかどうかは人それぞれだろうが、私の場合、締め切りがなければそのまま歌をやめていたかもしれない。
助詞の使い方や連作における品詞の配置など、表現技法の学びは結社に負うところが大きい。逆に、叙情的な自己表現を好まないのと、内容の縛りはなかったので、テーマや事物の切り取り方は我を通して今に至る。いったん手を離れたら読み手に委ねるものと教わったので、自解を求められる歌会は苦手だ。
三十一文字が自分にとって程よい長さであることも、歌を続けている理由の一つだろう。長文を書くのが苦手な反面、跳躍力に欠けるので、俳句という選択肢も最初からなかった。ただ、作歌が楽しくいくらでも作れるという時期は最初からなく、歌稿に苦労する点は未だに変わらない。
そんな風でつかず離れず、なぜ詠むかは「身近に歌があるから」というくらいの理由でよいのではないかと、最近は思っている。
祭り [歌誌月光]
停車場に人のあふれてみちのくはみじかき夏の祭りさまざま
ルドベキア群れ咲く山を下りゆけば海辺の町は炎暑にありぬ
海の上(へ)に繰り出だしたる船ぶねの満艦飾のひかりなないろ
着流しの友いささかを誇りかな午後はにはかに祭りめきたる
人混みをいとうてひとり夕すずみとぎれとぎれの遠花火きく
露台より望むみなとの夜は更けてスターマインに空のあかるむ
足もとの闇をかそかに揺らしつつ立ちのぼりくるこほろぎのこゑ
まつりにもわかうどの手を借りる地に震災いまだをはりなきなり
いそがしき午後のあひまにかき氷ふたつたづさへ友もどり来ぬ
四とせぶり道中踊りの道なりをあいさつの輪のをちこちに咲く
駅まへの目抜き通りに九つの山車ならびゐる旧のたなばた
こだはりの武者絵を透かすらふそくの灯に家康のまなこするどし
さんざめく山車をかこみてグルーヴは笛と太鼓のからみあひつつ
練り歩きをへ脱ぎ捨てし白足袋のすこしよごれて夏は畢んぬ
ひとげしき絶えればすだく虫のこゑいやまさりつつ秋たちにけり
ルドベキア群れ咲く山を下りゆけば海辺の町は炎暑にありぬ
海の上(へ)に繰り出だしたる船ぶねの満艦飾のひかりなないろ
着流しの友いささかを誇りかな午後はにはかに祭りめきたる
人混みをいとうてひとり夕すずみとぎれとぎれの遠花火きく
露台より望むみなとの夜は更けてスターマインに空のあかるむ
足もとの闇をかそかに揺らしつつ立ちのぼりくるこほろぎのこゑ
まつりにもわかうどの手を借りる地に震災いまだをはりなきなり
いそがしき午後のあひまにかき氷ふたつたづさへ友もどり来ぬ
四とせぶり道中踊りの道なりをあいさつの輪のをちこちに咲く
駅まへの目抜き通りに九つの山車ならびゐる旧のたなばた
こだはりの武者絵を透かすらふそくの灯に家康のまなこするどし
さんざめく山車をかこみてグルーヴは笛と太鼓のからみあひつつ
練り歩きをへ脱ぎ捨てし白足袋のすこしよごれて夏は畢んぬ
ひとげしき絶えればすだく虫のこゑいやまさりつつ秋たちにけり