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ナイル10月号掲載エッセイ【夢の中の夢】 ~このごろ見た、夢の話?――歌う現在 [ナイル短歌工房]

  住の江の岸による波よるさへや夢のかよひぢ人めよくらむ(十八藤原敏行朝臣)

 灯りを消してどのくらい経ったのだろう。暗闇の中に電子音が響く。私は身を起こし、チカチカ瞬いている携帯を開く。メールにはひとこと「わたしは今、ベッドにいます」。
 受話器を耳に押し当てると、「もしもし」とくぐもった声が届く。
 話はあちらへ飛び、こちらへ飛ぶ。ふたりはどこへでも行ける。夢だもの。ジベルニーの庭園へ、四ッ谷のバルコニーへ、真夜中のプラハへ、内乱のスペインへ。絵から転がり出たりんごをかじったり、痩せた彫像に手を回したり。
 語り疲れたふたりは部屋に戻り、かすかに皺の残る白いシーツにくるまって眠る。

  夢の中では、光ることと喋ることは同じこと。お会いしましょう(穂村弘)

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