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祭り [歌誌月光]

停車場に人のあふれてみちのくはみじかき夏の祭りさまざま

ルドベキア群れ咲く山を下りゆけば海辺の町は炎暑にありぬ

海の上(へ)に繰り出だしたる船ぶねの満艦飾のひかりなないろ

着流しの友いささかを誇りかな午後はにはかに祭りめきたる

人混みをいとうてひとり夕すずみとぎれとぎれの遠花火きく

露台より望むみなとの夜は更けてスターマインに空のあかるむ

足もとの闇をかそかに揺らしつつ立ちのぼりくるこほろぎのこゑ

まつりにもわかうどの手を借りる地に震災いまだをはりなきなり

いそがしき午後のあひまにかき氷ふたつたづさへ友もどり来ぬ

四とせぶり道中踊りの道なりをあいさつの輪のをちこちに咲く

駅まへの目抜き通りに九つの山車ならびゐる旧のたなばた

こだはりの武者絵を透かすらふそくの灯に家康のまなこするどし

さんざめく山車をかこみてグルーヴは笛と太鼓のからみあひつつ

練り歩きをへ脱ぎ捨てし白足袋のすこしよごれて夏は畢んぬ

ひとげしき絶えればすだく虫のこゑいやまさりつつ秋たちにけり

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歌会の歌 [歌誌月光]

10月 題詠「十月」

銀杏のぽとりと落つる音のしてふりむけば空、空の日だまり

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歌会の歌 [歌誌月光]

9月 題詠「歌」
(【注】概念としての「歌」ではなく、詞にメロディーをつけて
うたわれる歌です。かつて街角で聞こえて来た流行歌やあなたの
思い出の歌、愛唱歌などから一曲を選んで、それをモチーフに
短歌をつくってください。)

わくら葉をなぞるふたしか かへらざるわたしの空はいづこにあらむ


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ケセン語を聞く [歌誌月光]

ここからが旅のはじまり伝承館と一本松の地におりたちぬ

ひしやげたる消防車あり殉職のおほきをおもふあの日の午後は

「地のひとの無理には見ざれ」ふるさとは今なほ癒えぬかさぶたを持つ

町ひとつ流されしとふ戻るひとなき地まばらに草生ふる見ゆ

なにとなく言葉すくなは群れ咲ける藤のなだりに小雨そぼ降る

黄ばみたる原稿用紙を並べ替へ編みなほしては星座のかなた

そも何を業といひしかうつし世は生き別れたるカムパネルラに

さまざまの貌をもちたりてつちやんと呼ばれし画家の一九一二

珈琲の香のただよへる蔵ぬちに向かうて過ぐす午後やはらかし

まひるまはオシラサマ顕つ暗がりにあの世この世の思惟のおぼろげ

遠野産わさびの文字に購ひしアイスひとくち日ざかりの午後

まなかひに海はひらけて見せたしと友の言なる景ここにあり

空に伸ぶるうすあをの手ははてしなく防潮堤のタイルアートに

地の魚の活きを勧むるキャッセンのあるじにとほきケセン語を聞く

Y字路の果たては見えずドライブに三日聞きたりZero Landmine

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歌会の歌 [歌誌月光]

7月 題詠「角」

ストビューを辿りおとなふ街角はあの日のままに凌霄花(のうぜん)ゆれる
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旅のつれづれ [歌誌月光]

青葉若葉ときの盛りをほしいままげに杣道の辺を侵しけり

さわがしきつつじの群れにひねもす横断歩道はカッコウをいふ

参道のゆふべは早し暮れなづむ開運橋に猫をらずして

駅頭のベンチにひとりくつろげば漏れ聞こえくる隣のはなし

喧噪をのがれて来たるこの地にも外つ国人への差別はありや

支援者とおぼしき老いの励ましをむなしく聞きぬ同胞(はらから)として

うつむいて足早に去る若者のこよひの幸をひた祈りけり

山峡のなだりに沿うて藤のいろ日の暮れがたの空になづめり

どこまでも蒼きゆふぐれ眼下には灯のかずだけの暮らしがありぬ

かはたれに貨物列車の過ぎゆけばとほくちかくに時鳥なく

産地とふ誇りもあらう小ぶりでもたまご絶やさぬビジホの朝餉

立ちのぼる火花のさきにまぼろしの蛾のほの見ゆる護摩壇あたり

御堂にてスマホかざすも叩頭の信心あるはいかで羨しき

ひたひたと潮満ちくればからつぽのたましひのごと春の海月は

虐殺のありにし川にやなぎ葉のひかりはゆれて夏来たるらし

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歌会の歌 [歌誌月光]

6月 題詠「映画」

謀りごとたがひちがひに綯ひあはせ快楽(けらく)となさむひとよの花火

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歌会の歌 [歌誌月光]

5月 題詠「波」

「地のひとの無理には見ざれ」案内の友メモリアルシアターに入らずけり

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春の手ごたへ ~題詠百首より~ [歌誌月光]

賀状には無沙汰わびつつ「そのうち」は訪はざることと互ひに知れり

学窓を去りていくとせ老師より年賀じまひの葉書とどきぬ

憐れみと蔑みの差は紙ひとへ素足の老いにひとの目ははや

二階家の軒先にある干しものを見上げておもふ老いの独り居

打ちつづく値上げの波の絶えずして小部屋(をべや)の冬はいよいよ寒し

憂きことのおほかりければ寝ねがてに思ひめぐらすひとよの迷路

ずつしりと手に重りたる晩白柚わが厨辺を灯すきさらぎ

休日のまへの一夜を潤(うる)かせば豆つややかに煮らるるを待つ

あさぼらけ宿ゆながむる山険(やまさか)に仙女のごとくさくらひともと

みづうみの小舟の群れは浜荻の葉ずれの音に風向きをよむ

ゆりかもめ狭き日なたに吹きだまる川面にあはき春の手ごたへ

対等にあたふ講和のなかりせば果たてのみえぬいくさかなしき

ぬくもりは癒やしにあれな犬ねこを抱いて眠る兵士らの夜

かろがろと和平を言へず隆辱が日常なりし軍場(いくさば)あれば

ふたいろの旗はひつぎに掛けられて野辺の送りはどこまでつづく

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歌会の歌 [歌誌月光]

4月 題詠「情」

情(じやう)こはきをんなと呼ばれ歩き出す背(せな)を見おくる在所のさくら
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