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春の手ごたへ ~題詠百首より~ [歌誌月光]

賀状には無沙汰わびつつ「そのうち」は訪はざることと互ひに知れり

学窓を去りていくとせ老師より年賀じまひの葉書とどきぬ

憐れみと蔑みの差は紙ひとへ素足の老いにひとの目ははや

二階家の軒先にある干しものを見上げておもふ老いの独り居

打ちつづく値上げの波の絶えずして小部屋(をべや)の冬はいよいよ寒し

憂きことのおほかりければ寝ねがてに思ひめぐらすひとよの迷路

ずつしりと手に重りたる晩白柚わが厨辺を灯すきさらぎ

休日のまへの一夜を潤(うる)かせば豆つややかに煮らるるを待つ

あさぼらけ宿ゆながむる山険(やまさか)に仙女のごとくさくらひともと

みづうみの小舟の群れは浜荻の葉ずれの音に風向きをよむ

ゆりかもめ狭き日なたに吹きだまる川面にあはき春の手ごたへ

対等にあたふ講和のなかりせば果たてのみえぬいくさかなしき

ぬくもりは癒やしにあれな犬ねこを抱いて眠る兵士らの夜

かろがろと和平を言へず隆辱が日常なりし軍場(いくさば)あれば

ふたいろの旗はひつぎに掛けられて野辺の送りはどこまでつづく

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