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旅のつれづれ [歌誌月光]

青葉若葉ときの盛りをほしいままげに杣道の辺を侵しけり

さわがしきつつじの群れにひねもす横断歩道はカッコウをいふ

参道のゆふべは早し暮れなづむ開運橋に猫をらずして

駅頭のベンチにひとりくつろげば漏れ聞こえくる隣のはなし

喧噪をのがれて来たるこの地にも外つ国人への差別はありや

支援者とおぼしき老いの励ましをむなしく聞きぬ同胞(はらから)として

うつむいて足早に去る若者のこよひの幸をひた祈りけり

山峡のなだりに沿うて藤のいろ日の暮れがたの空になづめり

どこまでも蒼きゆふぐれ眼下には灯のかずだけの暮らしがありぬ

かはたれに貨物列車の過ぎゆけばとほくちかくに時鳥なく

産地とふ誇りもあらう小ぶりでもたまご絶やさぬビジホの朝餉

立ちのぼる火花のさきにまぼろしの蛾のほの見ゆる護摩壇あたり

御堂にてスマホかざすも叩頭の信心あるはいかで羨しき

ひたひたと潮満ちくればからつぽのたましひのごと春の海月は

虐殺のありにし川にやなぎ葉のひかりはゆれて夏来たるらし

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