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あゆの風~風の国ニッポンと私(2013年版歌人年鑑掲載エッセイ) [日本短歌協会]

 日本にはさまざまな風の名前がある。季節、地名、方角、植物……実にさまざまな要素が盛り込まれている。四季や地形の変化に富んでいる日本ならではのセンスである。風の名前だけでも二千もある国、というフレーズを思い出す方も多いだろう。
富山地方に「あゆの風」という風があることを最近知った。一般的なことばで言い換えれば「東風(こち)」に当たる。
波が高くなり漁そのものは危険になる反面、あゆの風はさまざまな海の幸を運んでくれる恵みの風でもあったらしい。難破した船を流れ着かせ、積み荷を恵んでくれることもあったようだ。
古来、自然の脅威を畏れながらも、その土地に寄り添い、自然の恵みを享受する生き方は、日本人に脈々と受け継がれているように思う。あれほどの被害を受けてなお、根を下ろしていた土地に住み続けたいという東北の人々のように。
東風(あゆのかぜ)いたく吹くらし奈呉の海人の釣する小舟漕ぎ隠る見ゆ(大伴家持)
あゆの風すさべば饗(あへ)を運ぶらし漁る舟の見えつ隠れつ(真理子)

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