SSブログ

【闇に溶けず】(2012年版歌人年鑑掲載歌12首) [日本短歌協会]

祠より風吹き来たり空の胸につと潜り入る狐の尾見ゆ

「庭の日」を教へし君の言の葉に匂へる夢は飛燕草のあを

罪の夜に吐息は溶けぬひさかたの雨な散らしそあだ桜ばな

雨だれに薔薇は深紅の砂糖漬けショパンを愛づる君が窓辺の

慰めのしづくのひとつ零るれば水琴窟のひそやかに鳴る

所在なきスワンボートを眠らせて湖(うみ)閉ざすかに六月の雨

春鬻ぐひと多き街のかたすみに色づく桑のひとふさを食む

改札に君を送れば雑踏へたがひの生(しやう)を捲いて帰れる

基督を捨てえぬままに抗へば深い(デイープ・)河(リバー)の彼岸見えざり

書き割りの小暗き隅に吾の居場所ひとつ与えよアルマ・マーテル

牢獄(ひとや)なる真闇に染まで生ひ立てばそをアルビノとひとの言ふめり

「光あれ」と言ひけるは誰そ闇に生れし処女子ひとり闇に溶けざり


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0