たまさかの逢瀬おえたる肩口に気づかれぬまま刻印ひとつ
巧みてか気まま勝手かへうへうと茶寮にあそぶしろかねの月
なにごとか囁きつらむ閲覧を禁じられたる書架に吹くかぜ
海の辺をそぞろ歩けばうちひさす宮古上布に風のたはぶる
うすずみの街をぬらして宵闇をつくり出したる雨の煽情
あけやらぬ七里ヶ浜にたはぶれし日をとぢこめてシーグラスはも
まなざしを故意にはづしぬわたしとは関はりなきと言ひだせずして
魑魅魍魎めきたるボッシュの群衆のいづれかひとり我にやあらむ
たとふればゴッホの椅子か残さるる遙かな愛にいのちなきもの
目をあはす輩(ともがら)のなくたかてらす日ざかりに皇帝ダリアの孤独