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094:衆(紫苑) [題詠blog2013]

群衆にまぎれて歩むこゑに出し蟻よさらばと言ひえぬままに

093:ドア(紫苑) [題詠blog2013]

うしろ手に栖のドアを閉づるときみそかごころの芽ばえはげしき

092:局(紫苑) [題詠blog2013]

局てふ厨のすみにうづくまりあらがふごとく赤茄子を食む

091:鯨(紫苑) [題詠blog2013]

鯨波たえてひさしきいさなとり太地の海はけふも暮れゆく

090:唯(紫苑) [題詠blog2013]

うつくしき谷間の百合を語りあふ唯物論をうしろ手にして

089:出口(紫苑) [題詠blog2013]

爆音のただなかにゐて出口なき夜の迷路をマウスははしる

088:弱(紫苑) [題詠blog2013]

ひとたびは世のすゑを視し弱法師の目を閉ざしけりふたたびの修羅

087:餅(紫苑) [題詠blog2013]

いはひごととはほど遠き厨べに月餅ひとつもてあましをり

086:ぼんやり(紫苑) [題詠blog2013]

さまよへる夜ごとの影をかたはらにコンビニの灯のぼんやりと照る

085:歯(紫苑) [題詠blog2013]

愛咬や散り敷く梅が香のとほく闇間に冴ゆる糸切歯かな