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速水御舟「炎舞」を詠む [美術]

鱗粉(こな)を撒(ま)き焔(ほのお)に灼(や)かれ闇に消ゆる
それその小さき蛾こそ我なり

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ゴッホを詠む [美術]

麦畑の右下に朱(あか)き芥子いちりん夏のひと日にゴッホを恋す

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子供の頃、家に「少年美術館」という大判の画集がありました。
その画集で初めてゴッホに触れたのは5~6歳だったと思います。
それ以来、ゴッホは私の大好きな画家のひとりです。
色褪せた画集は今も手許にあり、開くと切なさがつのります。

ポール・ゴーギャンを詠む [美術]

抗える我が手を引ける強き手に屈せば満ちる幸(さち)とかなしみ

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褐色のはだえに満ちる陽光に与(くみ)しえぬ闇に引き裂かれつつ

南洋に生老病死描ききりなお彼(か)のうちに主はおわします

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この秋、大きな展覧会があったポール・ゴーギャン。
1首目は普段あまり見ない木彫の作品「恋せよ、さらば幸福ならん」を詠みました。

2、3首目は《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》を
下敷きにして、西洋と東洋、聖と俗など両極に引き裂かれた葛藤を詠みました。

ゴーギャンをモデルにしたといわれるサマセット・モームの「月と6ペンス」が大好きです。
でも実際のゴーギャンはより対極的なものに引き裂かれ、苦悩したのだと感じました。
タヒチを舞台に畢生の大作を描きつつ、カトリック教徒として死に、葬られたことに
感慨を覚えました。

グスタフ・クリムトを詠む [美術]

クリムトのダナエに問いぬ 恍惚と死の境界はいずこにありや

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グスタフ・クリムトは20世紀初頭のオーストリアの画家。
金箔を多用し、独特の死生観とエロティシズムを湛えた絵は
とても印象的です。

「ダナエ」は眠るダナエが金の雨に姿を変えたゼウスを
受け容れる場面を描いた絵です。

エロティックなはずなのに
死を同時に感じます。

鴨居玲のパレットを詠む [美術]

目を瞑(つむ)り口開(ひら)きしにその声を髪吹き乱す風の攫(さら)ひぬ

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笠間日動美術館のパレットコレクションをテレビで見ました。
パレットの中央にデスマスクさながらの自画像を描いて
数年後に自裁した鴨居玲の作品を見て、
ことばがありませんでした。