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薄緑色の桜 [自然]

陽を透かす翠のさくら空に溶け秘する色香の臈たけて見ゆ

家の近所に多くの種類の桜を集めてある場所があり、
写真を撮りに行きました。
「御衣黄(ぎょいこう)」「鬱金(うこん)」という
薄緑色の桜がとてもきれいで、印象に残りました。

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花桃 [自然]

ももいろのあやかしのごと空おほふ枝のいづこに鳥は啼くらむ

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近所のキャンパスにとても大きな花桃の木があり、
毎年この季節に満開になります。

「花葎(はなむぐら)」ということばがぴったりなほどびっしり咲くので
重みというか、ちょっとした息苦しささえ感じるほどです。

枝のどこかでヒヨドリが鳴いているのですが、
写真を撮るにはよく探してズームアップしなくてはなりません。
(写真の右側、半分よりちょっと下に鳥がいるのがお分かりになるでしょうか)

最近、桜を「ももいろのけもの」と表現した歌を読んだのですが、
そのままではあんまりかと思い、少し変えてみました。

芽生え [自然]

下草の青みて萌ゆる枯れ野原土の匂ひはチェロの音に似て

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3月に入り、枯れ草を押し上げるように新しいいのちが芽吹き、
近所の空き地にはクローバーがみるみるうちに
緑のじゅうたんを拡げています。

夏とはちがいますが、
草の匂いや土いきれは確実に感じられます。

「穏やかな豊饒」のイメージでチェロを選びました。
大好きなミッシャ・マイスキーのバッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」です。

 [自然]

野に生うる蕗摘み来たり煮附ければ身うちに浅き春の心地す

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散歩に出た折、近所に野生の蕗が生えているのをみつけました。
今までも生えていたのでしょうが、歌を詠むようになって
動植物を注意深く見るようになったので気づいたのでしょう。

幸いかなりの急斜面で、犬も足を上げなさそうなところだったので
摘めるだけ摘んで帰り、水にさらした後佃煮にしました。

家で作るものとてお砂糖を控えたので、苦みのきいた
春らしい味に仕上がりました。
写真のうつわは李朝の雑器です。

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火星 [自然]

世を捨つるひとのなみだか浅き春血色の星の名前を知らず

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1月下旬でしょうか、こいぬ座のプロキオンからちょっと離れたところに
見慣れない赤い星があるのに気づきました。

それまで絶対なかったと思うのに、かなり明るい星です。

最初はふたご座のポルックスかと思いましたが
(ポルックスも橙色の星なので)
片割れのカストルがありません。

位置的にどうかなと思う獅子座のレグルスは白い星です。

「世捨て人の涙」というのはつくり話ですが、
星の名が分からないままに詠んでしまいました。

しばらくして教えてくださる方があり、その「星」が
1月下旬に最接近した火星だと知りました。
火星の和名は「夏日星(なつひぼし)」です。
でもなぜか過去にも冬に地球に接近している……。

凍て空に誰が燃やせしや夏日星あかき光は胸裡を射つ

初恋草 [自然]

染め分けのうすき胡蝶のはなびらは陽にかほを向け春を恋ひしむ

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ベランダがいっぱいだと言いつつ、花屋さんの前を通ると
ついつい誘惑に負けてしまいます。

正式な名前は「レケナウルティア」、オーストラリアの
ワイルドフラワー(野草)だそうです。

単色の花の中にひと鉢だけあった淡い黄色と青紫のバイカラー、
「ムーンキャッスル」という名前にイチコロでした。

しかし「初恋草」という通称はねぇ……。
「初恋」という言葉は、それこそツルゲーネフや島崎藤村といった
文豪にかかればみずみずしさもひとしおですが、
下手に使えば通俗的な、手垢のついた言葉に堕してしまいます。

なんとか通称を使わずに詠めないかと、妙なところに気を遣いました。

草木染め [自然]

布染むる実を摘まむとて野に入れば丈なす薄われをさまたぐ

摘みおきし実を濾し取りてわが衣にそのむらさきのいのちをもらう

この秋、近所の空き地にヨウシュヤマゴボウがたくさんなっているのを
見つけたので、久しぶりに草木染めをしようと思い立ちました。

ヨウシュヤマゴボウの色はとても定着しにくく、
かといって加熱するとあのきれいな紫色がすっかり抜けて
ひよこ色になってしまうので、今回は加熱しない方法を取りました。

摘み貯めた実を軸からはなし、濾して染めるまでに
2時間ほどかかりました。媒染剤はミョウバンです。

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3昼夜染め液につけておいたセーターをすすいで水洗い。

ゆっくり時間をかけたところ、
びっくりするほど濃い葡萄色に染まりました。

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桜やクヌギなど、皮をはいで煮出すような大がかりなことはできませんが
コーヒーや紅茶は簡単に手に入りますし、
そのうちクサギ(青く染まるそうです)などにも挑戦してみたいと思います。


青い薔薇 [自然]

まぼろしに手届くことの哀しかり玻璃の涙は青き薔薇に落つ

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サントリーとオーストラリアのフロリジン社が共同で開発した青いバラが
数量限定ながら一般に発売されました。

青いバラはブリーダーの夢。
けれど、バラには本来青色色素がないため、
今までの「青いバラ」は薄紫が限界でした。
今回バイオテクノロジーで開発された青いバラは
今までの「スターリングシルバー」や「ブルームーン」より
はるかに青に近い色をしています。

自然界の交配では作り出せなかったため、
「青いバラ」には「不可能」という意味合いがありました。

この「青いバラ(blue roses)」という言葉をとても効果的に使っているのが
テネシー・ウィリアムズの「ガラスの動物園(The Glass Menagerie)」。

語り部・トムの同僚ジムは、かつて同じクラスだったトムの姉のローラを
「ブルー・ロージズ(blue roses)」と呼びます。
台詞の上では、トムが「プルーローシス(pleurosis、肋膜炎だったか
胸膜炎だったか)」を聞き違えたという設定になっていますが、
「blue roses」には現世にはありえないもの、
現世になじめないほど純粋なものという意味合いが込められているのだと
演劇史の時間に教わりました。

歌はローラの愛称の"Blue Roses"と、ローラが大事にしている
ガラスの一角獣をイメージして詠みました。

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黄色の薔薇 [自然]

黄の薔薇を野菜と共に前籠に積み入れ走る春ぞうれしき

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春先に詠んだ歌です。
自転車でお使いに行ったスーパーで、黄色のミニバラを買いました。
自転車のかごに買ったバラを入れて走っているときの、
まだまだ冬めいた町に春をふりまいて走っているような
明るい気持ちを詠みました。

ピンクの薔薇 [自然]

ころも鎧ふ砂糖菓子とて汝が唇の触れなば溶けむももいろのばら

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ある方のブログでピンクのバラの画像を拝見しました。
ベビーピンクの六分咲きのバラを見て思い浮かんだのは
ケーキの上の砂糖菓子。

柄にもなくちょっとロマンチックに詠みました。