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西中眞二郎さんに選歌をいただきました [題詠blog2012]

002:隣 里やまに春の隣りの近ければ梢を透かすひかりやはらぐ

010:カード カード引く指に力の籠もりきて幼なき目より笑ひ消へたり

011:揃 不揃ひの小鉢に似たり差し向かひ黙して過ぐすひと日の終はり

019:そっくり ひとの子とそつくりに鳴く野良一匹見捨てもならず餌を運びをり

025:触 触角に陽を滑らせつ黒き蛾のひた眠りをり夜を待ちつつ

028:脂 脂粉の香きみに移さじ午後の陽に傾(かたぶ)くまでの倫(のり)を保ちつ

029:座 うつし世に渡せる橋のなきを知る夜空にとほき白鳥星座

034:聞 胸板のうすきを指になぞりつつ聞き負ふことのかくも重かり

039:蹴 吹く風に紅き蹴出しのほの見えて春の川面にさざなみ渡る

041:喫 天井にひかりの反射ほの見えて喫水線に滲みくる蒼

042:稲 飛び起きて虚空を睨む猫の眸の奥に小さき稲妻はしる

043:輝 花びらのひとひら落つるその刹那ひづめるままに輝かむとす

046:犀 木犀のかをる夕べに抵抗と自由の詩を読みかへしつつ

051:囲 雪囲ひせし樹々の絵を添え来たる御文はつかに雪の匂ひす

053:渋 せはしなき人並みに取り残されぬ夜の渋谷のスクランブルに

054:武 棲まひせしひとも聞きけむ武相荘(ぶあいさう)を包める竹の群さやぎをり

056:晩 日の暮れておのれに向かふ時の欲し茜の空に晩鐘わたる

062:軸 ふたしかな思ひの軸は傾ぎゆきバレエ人形しづもりて止(や)む

065:酢 青き香をはなつ酢橘(すだち)を掌に包めばひと日華やぎにけり

070:芸 曲芸の美(は)しうつしよの混沌に一点うがつ錘の立ちたる

071:籠 亡き魂を偲んであはし灯籠の火影は海へ遠ざかりゆく

072:狭 蕗の薹ひとつ葉陰に出で初めてわが狭庭にも春おとづれぬ

074:無精 無精ひげ疎らなるまま午後ひと日憩へる君の喉仏見つ

075:溶 チェロの溶く乳色のもや流れゆき白鳥の影ゆうらりと立つ

078:査 皺みたる山査子(さんざし)の実の酸き甘き綯ひ交ぜにしてひそと食みをり

080:たわむれ たはむれか黄金(こがね)の雨に身を浸すダナエの眠り安けからまし

081:秋 抽斗の奥にねむれる秋扇(あきあふぎ)たき込めし香も聞こえずなりぬ

082:苔 薄ら日の斑を描きつる苔寺にいにしへびとの影行き交ひぬ

085:甲 甲高き喇叭は光る粒子おび丸天井のいただきに果つ

087:チャンス ほの消ゆるワン・モア・チャンス暮れ方の桜木町に靄たちこむる

090:舌 あやまちの舌に結べる桜桃の茎のしなりよ日の翳りけり

094:担 花籠を担(かた)ぐ乙女の背を追うて朝の風は小路をわたる

095:樹 菩提樹(ローレル)の乙女をうたふひとあれば思ひ遙けしカンツォニエーレ

097:尾 人波の絶へてひさしき夕ぐれに尾花をわたるはつ秋の風

099:趣 辛(から)き酒などふくみつつ歌詠めば身体(からだ)の芯に野趣よみがへる


去年に比べて恋愛詠、官能詠が多かったのですが
終わってみればさほど変わらない数を選歌いただきました。
ありがとうございました。

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