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「初恋」 テーマ詠 [恋愛]

春雨のしづく置きたる堅香子のうつむくさきに恋ひとつ落つ

   Hanada_katakuri.jpg

高校まで女子校でしたし、大学入学後もなにより家がきびしく、
いわゆる「淡き初恋」らしきものは全然ありませんでした。

「初恋」をテーマにした歌会が開かれたとき、実はスルーしようと思ったのですが
主宰者から投稿の督促があり逃げるわけにもいかず……。

先日、「笹短歌ドットコム」で「花田少年史」を詠んだせいか、
「初恋」からすぐ連想したのはカタクリの花です。

ある日、主人公の一路と知り合い、一路の家に世話になるりんこ。
本名は倫子(のりこ)ですが、皆にりんこと呼ばれています。

りんこは一路に、今は無人となった部落のはずれにある
崖下に転げ落ちた石のお地蔵さまを
元の場所に戻してほしいと頼みます。

このりんこ、実は生きている人間ではありません。
昭和の初め、その部落から口減らしのために女郎屋に売られ、
家に帰ろうと逃亡して追われたあげく、その崖から落ち、死んでしまったのです。
りんこの母親はそれを嘆き悲しみ、もともと病身だったこともあって
ほどなく世を去ってしまいます。

りんこが「元の位置に戻して欲しい」と頼んだお地蔵さまは、
彼女らを弔うために村人が彫った母子地蔵の子供のほうだったのです。

一路が石地蔵を元に戻した夜、りんこは一路を自分と一緒に
連れ去ろうとします。
でも、普段はしょっちゅう一路を怒ったりぶったりしている一路の母親が
涙でぐしゃぐしゃになりながら一路を探す姿を見て、
りんこは「一路がとても好きだから置いていく」と言い、天にのぼってゆきます。

一路が石地蔵に供えたカタクリは徐々に増え、やがてあたり一面
薄紫のカタクリが咲くようになるのでした。

堅香子(カタクリ)の花言葉は「初恋」。
この世で実を結ばない、ほんとうに淡い初恋のお話です。

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